これまで十数例を取り扱った経験があります。うまくいったケース、時間のかかったケース、色々です。交通事故には、事故後の加害者との交渉、保険屋との交渉、警察での事情聴取などで二次被害にあいやすいことや、むち打ちなどで身体的な後遺症が残りやすいこと、PTSD症状が出ても外科医や内科医はそれを「情緒不安定」「不定愁訴」「自律神経失調症」「性格の問題」などと間違った解釈をされ、本人もPTSDであることに気づかず苦しんだり、職場からも「ずる休み」「弱い人間」と誤解され、これも二次被害になったりします。様々な要因が複合的に重なり、治療が難しくなるケースもあるような気がします。二次被害のことを考えると、早い段階でEMDRの治療を受けた方が余分な苦しみ方をせずに済むのかもしれません。
ただ、補償問題がからんだ場合、裁判になった場合など加害者と被害者間で問題がこじれてそれが長引く場合には、治療効果が著しく落ちるということも経験の中で感じます。
トラウマからの回復というものは、その苦痛な出来事が自分から遠く離れていってくれることであると言えると思いますし、補償問題や裁判問題などで紛争が持続する場合には、出来事が現在の問題であり続けて、過去の遠く離れた問題になってくれない… ということが起きているような気もします。