なぜ、トラウマのページに自閉症スペクトラムの話が出てくるのか 不思議に感じられるかも知れません。
私は、長年トラウマを治したいと色々と頑張ってきました。主に、EMDRという治療技術を使って。そして、経験の中から、治療によく反応して治りがよい人と、そうでない人がいることも感じていました。また、そうした治療反応性の違いを見分けたいと思っておりましたので、経験的にはなんとなく判別がつくようにもなってきていました。
そうした中で私もこれまで苦手意識がとても強くて発達障害や、自閉症スペクトラムなど目を背けて不勉強にしてきたことにだんだんと目を向けるようになってきました。これらの問題は、時代的にも最近注目を集めてきている分野でもあります。
自閉症スペクトラムの方の場合、程度の軽い・重いの違いはあるでしょうが、そうした障害があると治療者が気がつきながら、治療を進めるのと、わからずに進めるのとでは大きな違いが生じるであろうと考えています。そうした障害のない人と比べて、治療の進み方、反応の仕方にも色々と特徴があったり、難しい面があったりするようにも思います。
最近小児精神科医で自閉症スペクトラム障害にも詳しい方から次のようなことを教えていただきました。
- EMDRなどの技法以前に大切なことがあり、それは生活の安定化のためのケースワークであり、それを通じてのさまざまな支援者との間の信頼関係の醸成をすることである。自閉症の方々の世界観は独特のひろがりをみせ、支援者にはある程度それを理解、受容、擁護できる能力が必要である…
- 基本的に、治療者に対して信頼関係がない状態ではどんな支援方法も治療方法も上滑りするか拒絶されるでしょう。逆にそれが形成されつつあるなかであれば、方法を選べば有効な治療となるでしょうし、EMDRもそのひとつです…
NHK教育テレビのETV特集で杉山先生の番組が放送されてから、発達障害の方へのEMDRということが注目されるようになり、治療を希望して来られる方も増えてきたのですが、現実問題としてはEMDRを行えば昔の辛い記憶(多くはタイムスリップ現象から生じるもの)が簡単に楽になるという具合には行きません。EMDRだけではないと思いますが、心理療法には治療者との信頼関係がとても大事です。そして、発達障害があると、そうした信頼関係の構築がより難しくもあり、またより慎重にそれを構築していく必要もあり、そうした準備に長い時間をかける必要があるということになります。つまり、EMDRがうまく実施できるかどうかは最初からなかなか見通しが立ちにくいし、EMDRをするとかしないとか判断する以前に、長い期間治療関係を続けながらだんだんとわかってくることだと思います。おそらく、発達障害のない方よりも準備に時間をかけないと前に進みにくいのではないかと思います。
〜中途ですいません、また、書き足して行きます〜