トラウマの治療について

  • はじめに
  • EMDRとは
    • EMDRに対する印象
    • 暴露療法とEMDR 〜悲しい競争〜
  • DESNOS
    • Complex PTSD
  • 自然災害(阪神大震災)
    • 自殺(目撃又は近親者の)
    • 交通事故
    • 性被害
    • 加害者と被害者
  • 自閉症スペクトラムとトラウマ

自然災害(阪神大震災)

 阪神大震災のPTSDの治療経験があります。今までのところ、1回のEMDRセッションでPTSD症状が著明に改善しています。単回性のPTSDには大変よい効果が出ているのだなと感じさせられます。

いずれも震災からしばらくしてかなり激しいPTSD症状が出ていました。不眠、フラッシュバック、不安、警戒心等はよく見られる症状です。テレビで地震の報道が流れると、激しい恐怖が甦って冷静ではいられなくなりパニック状態に陥ってしまうとか、夜寝る時にはいつでも避難できるような準備をしておかないと安心できないとかもよく見られる症状です。

震災のPTSDの患者さんは、多くの場合自分がPTSDであるので治療が必要であるという認識をあまり持っていません。むしろ、多くの人が治療を受けていないのに「自分の反応が普通ではなく、心が弱いのだ、駄目な人間だ…」と自責しており、PTSDの苦しみと自責の苦しみとの二重の苦しみ方をしている人が多いように思います。

EMDRセッション後に、患者さんが「あれ? 震災を思い出すと恐かったんですけど・・・」と笑いながら首をかしげられていたのが印象に残っています。EMDRがうまくいった後には何年かたっても症状の再発・再燃はでていません。EMDRの手堅い治療効果を感じます。