EMDRとは、Eye Movement Desensitization and Reprocessing(眼球運動による脱感作と再処理)の略です。左右の眼球運動を行いながらトラウマの治療を行います。このEMDRは大変有効性の高い治療方法です。PTSD, トラウマの治療方法として、画期的な技術であると言えます。
日本EMDR学会という、日本でEMDRを普及させる団体がありホームページを開いていますので、参照ください。
残念なことにEMDRの治療効果は正しく理解されているとは言えません。おそらくこの技術を開発したShapiro博士が心理学者であり、またEMDRは米国では主に臨床心理士によって普及されていることもあり、精神科医からはなじみの無いものとして見られているのかも知れません。しかし、米国の精神科医で「トラウマティックストレス」の著者としても有名なvan der Kolk氏はEMDRの治療効果に注目し研究を発表したり、日本でも紹介したりしています。1997年にvan der Kolk氏が東京で講演した際にEMDRの紹介をしたのが私がEMDRを知ったきっかけでもありました。日本においても、まだあまり正しくは認識されていません。JSTSS(日本トラウマティックストレス学会)というトラウマやPTSDを取り扱う学会でもEMDRの発表はあるものの、半信半疑な人が多いのも事実です。その理由は、著明な精神医学の雑誌に論文が出ていないというのが最大の理由です。研究者と臨床家の感覚の違いを感じます。また、暴露療法を推進しようとする人たちは政治的な対立を持ち込む傾向もあり、悲しいことです。理解と普及のためには、患者さんを治していくという臨床家の努力と、研究による実証の両方が必要なのでしょうが、まだまだ時間がかかりそうです。
NHK教育テレビのETV特集で、2013年9月14日「トラウマからの解放」というタイトルでEMDRのことが取り上げられました。これを見てEMDRを希望される方も多いことと思います。
日本EMDR学会は、EMDRトレーニングを終えた治療技術を持った人のリストを公開しています。治療を必要としている人にとってどこで誰に治療を受けるか参考になることでしょう。数多くの名前が掲載されているので、EMDRを希望する方にとっては誰を選べば良いのか戸惑われることでしょう。ひとつは、通いやすいということも条件としては大事でしょうし、資格を取得されているということも治療者の熱心さと努力の成果を知る手がかりになると思います。